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麻布大学付属動物病院にて・・・
腎臓は沈黙の臓器と言われており、70パーセントの機能がなくなって初めて症状がでてきます。ですから症状が出た時点で既にかなり腎臓が悪くなっているのです。腎臓の細胞が再生し回復する事はないのですが、症状を素早くみつければ、食べるご飯を療法食にかえたり、皮下点滴などで体調を維持できる可能性があります。おしっこを濃縮できず、水とミネラルともに体外に出してしまうため脱水してしまった猫は、緊急の場合は静脈点滴が有効ですが、この皮下点滴もすごく楽になります。できるだけ症状を見逃さないようにするには、いつもの飲み水の量、おしっこの回数や量、できれば尿比重を時々チェックして把握しておくことだと思います。いつもより、水を多く飲んで頻繁にトイレに行くようなら、すぐに獣医師に診てもらった方が良いと思います。
うちの猫はエコーでみると、右の腎臓が水腎症で大きく膨らみ、腎臓構造自体薄い膜のようになってしまって全く機能せず、水と老廃物がいっぱいに詰まっていました。左も水腎症でダメージを受けていました。年齢も若く、こうした症例は大学でも初めてだとのこと。先天性の疾患で尿道を締め付けるように塞いでいたので、開腹手術で原因を取り除き、機能しない右の腎臓を摘出しました。当初なす術はないということで絶望的だったのですが、詳しく獣医師と話をする中で、大学病院の選択肢が提示され、私たちも手術を決断することが出来ました。絶望のふちにあった私たちに丁寧に冷静に選択肢を話てくださった先生に感謝しています。その猫を一週間ぶりに病院へ迎えにいって自宅に戻ったところ、元気いっぱいに走り回っています。症例としては極めて珍しく、ここまで回復する事はあまり無いことかもしれません。本当にありがたいです。
昔はネズミを捕る為に猫が大切に飼われていたんだと思います。いまでは先祖の恩を仇で返すように、野良猫を疎ましがる人もいますが、なんとか仲良く暮らして行きたいですね。イタリアなどでは、小学生が交代で街中の猫(日本でいう地域猫)の小屋を掃除したりして清潔に暮らせるように工夫していますね。
手術室には総勢12人の方々が入りました。手術を手助けしたり、記録をつけたりしています。猫が手術される様子をすべて見る事ができましたが、お腹をメスで切って、臓器を紙のようなもので保護しながら、移動させて観察している様子は、優秀なメカニック。縫合を進める手さばきは、ギタリストとといったところ。手術の道具をバシッと手渡す。汗を助手が拭く様子は、TVや映画などでみる外科医と同じ。非常に緊迫した1時間弱の手術でした。